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【詩人】詩の橋を渡って 言葉に孵化しない<何か>=和合亮一(詩人)[2018/05/28]

1虹◆onElYHqWJBVO:2018/05/28(月)09:31:00 ID:8GA()
【詩人】詩の橋を渡って 言葉に孵化しない<何か>=和合亮一(詩人)[2018/05/28]

5月
 はずれの言葉。辺縁の言葉。どこからでも始まる言葉。アーモンドの木の言葉、春と高齢の雪。

 この言葉の卵は孵化しないだろう。

 三〇歳で出した第一詩集から現在までの作品を選び、二冊の本にまとめる作業をほぼし終えた。
 いざ始めてみると当時の暮らしの記憶が鮮やかによみがえってくる瞬間が多くあった。
 日記のように作品に直接に書かれているわけではないけれども、
 心の引き出しにおよそ二十年ほどの生活の切れ端のようなものが仕舞(しま)われてあることを実感した。

 フランスを代表する詩人、ジャン=ミッシェル・モルポワの三十数年前の詩集『イギリス風(ふう)の朝(マチネ)』(有働薫訳、思潮社)が出た。
 当時、やはり同じく三〇歳。自分の人生の編集作業をしつつ、傍らで夢中になって読み耽(ふけ)った。
 「言葉のなかには何の理由もなく歌の前後にやって来るものがある。沼の間に苔類(たいるい)が、海岸の岩の上に海藻が見つかるように……。
 そんな言葉には塩と嵐の後味がする。」。「歌」とはこの場合、詩を作ることを言い表しているのだと作品の全体を読むと分かる。

 言葉で何かを書こうとすると別の<何か>がやって来る、そして逃げていく。
 しかし書くことの楽しみは、イマジネーションの不意の訪れと出会うことこそにある……。
 時にはじれったいものでもあり、なお待ちわびるものでもある。
 ある詩人はそれを、岸辺にて釣り糸を垂れていて水面に浮かんでは消えていく大きな魚影に譬(たと)えたが、水中で静かに育ったり、
 波間を激しく漂ったりしている「苔(こけ)」「海藻」に、なぞらえているのが面白いと感じた。

 「かれ」に想像をめぐらす。「軽い情熱に捧(ささ)げられたかれの心臓のフルートは花を見たときにしか夢中にならない。
 熱狂的な血がかれの頭を潤す。」。「風がかれの翅(はね)の脈をとる。/かれは光の悲鳴である。」。
 はでやかな蛾(が)が捕らえられている。イメージが結晶する感触は羽根の文様に似るかのようだ。
 年月を経て今に届けられることに気づき、光の叫びを聞かされた心地になってはっとさせられた。
 新鮮さは歳月を超えてなお生き生きとしている。

 詩人の筆の秘密が見えた気がした。「はずれの言葉。辺縁の言葉。どこからでも始まる言葉。
 アーモンドの木の言葉、春と高齢の雪。/この言葉の卵は孵化(ふか)しないだろう。」。
 「はずれ」「辺縁」にある、そして「孵化しない」=言葉として生まれ得ない<何か>。
 それへの眼差(まなざ)しが詩句に新しさと美しさを呼び寄せようとしていると感じられた。
 言明できないものへ近づこうとする憧れと若々しさがフレーズに宿る。その感覚が時を経て窓を開く。
 
 https://mainichi.jp/articles/20180524/dde/014/040/002000c
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